ただ、それだけ。(18) の穂積視点です。
よろしければ↑と一緒にドゾー。
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「お疲れ様でした」
「うん、穂積もお疲れ。色々ありがとう」
労いの言葉に、野田が柔らかな笑みを穂積に返す。その表情を目に焼き付けるように、穂積はじっと野田に見入った。
野田と五度目になるこの店は相変わらずで、最後まで野田には不似合いだという穂積の印象は変わらなかった。野田にこの店への拘りがあるのかないのか、野田は結局他の店への興味を示さなかった。
野田との仕事が終わった。完成した駐車場は完璧だった。外観から細部に至るまで、どこのどの部分を取っても野田の穏やかな優しさと、内に秘めた強さのような物が感じられた。その愛しさの余り穂積は、一人誰もいない階へと上がり、その壁にそっと口付けた程に。
「ウチの方は事故もなく完成したし、とりあえず一段落だね」
いっそ事故があれば野田と一緒にいれる期間も延びたかも知れないのに、などという穂積の思考に浮かんだ不謹慎な考えは胸の内にそっと仕舞い込んで、穂積は野田に頷きを返した。
「そすね。……野田さんの設計したものがあそこに建ってるかと思うと感慨もひとしおすよ」
「ん……それだけがこの仕事やってる醍醐味みたいなものだからね」
「俺は何も作る事ができませんから。こうやって近くでそれを見せてもらって改めて凄い事だなって。そう思いますよ」
「ありがと。穂積たち営業がいてくれないと、俺たちも仕事できないから。感謝してるよ。……また一緒に組めたら、その時はよろしく」
野田が穂積をじっと見詰める。その目が、穂積に言葉を求めている。
――野田さんは、俺に何を求めているんですか?
彼には妻があり、子供もある。その野田の絵に描いたような幸せを、自分が壊して良い訳がない。そしてきっと穂積が何か言ったところで壊せるはずもない。
野田の身体が、男を受け入れる事を悦びとして覚えた事は間違いない。穂積がそれを匂わせたら、野田はきっと、その身体を穂積に惜しげもなく開くだろう。
けれども。
穂積の方から、身体だけのこの関係を続けたいと野田に告げるには、穂積は野田を愛し過ぎていた。自分のものになり得ない野田を、穂積の方から求めるのはもう、終わりにしたかった。
「そう、ですね。……その時はこちらこそ。よろしくお願いします」
――野田さん。俺からは、言えません。最後だからこそ。せめて嘘は吐かずに終わらせて下さい。
しばらくじっと野田を見詰め返し、穂積は自嘲するように笑って、そして目を伏せた。
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