「なあ〜、啓輔ぇ、席代わってえや〜」
「……いやじゃ」
「ケチぃ〜」
二学期入って最初の席替え。良充はまん真ん中の一番前の席を引き当てた。ちなみに啓輔は良充の隣の列の前から三番目。
「こら、枦(はぜ)〜、いっぺん決まったモンは変更きかんぞ〜」
啓輔に座席のスイッチを頼み込む良充の声を聞きつけて、担任の山中がすかさず釘をさした。
「うっわ〜、山中、ムカツク〜。啓輔がいいんやったらええやんかぁ」
「……だからいややって」
啓輔の机につっぷしてお願いする良充に冷たく言い放つ形で啓輔は答えた。
「ええ〜っ? なんでぇ?」
「だいたい、俺の席の方が先生の目が届きやすいやろ。灯台もと暗し、ていうやん」
「そーはいかんで。枦は居眠りの常習犯やからな。きっちり目届かせるで。それに、お前のお目付け役からもよう見えて、ええ席やないか」
勝ち誇ったように山中ががははと笑う。
「くっそ〜、山中〜っ! イカサマしたんちゃうやろな〜っ」
がははと笑いながら教室を出て行く山中の背中に向かって良充が叫んだ。クラスメイトたちからは「まあ、がんばれよ〜」だとか「そやそや〜。松山が見ててくれるんやから大丈夫やって〜」とか、無責任なかけ声が笑い声とともに投げかけられる。
「あ〜もう、俺絶対寝てまうから、ホンマ、啓輔、ちゃんと見ててくれよ」
諦めた良充は上目使いの大きな目で良充を睨み、唇を尖らせて啓輔に言った。
「おう、見てたる」
啓輔は膨れっ面の良充の頬を、指でつまんでびよーんと伸ばした。
「痛っ! 何すんねんっ!」
「眠気覚まし。ほら、もう先生来るで」
啓輔がそう言った途端、教室の戸ががらっと開いて、現国の池田が入ってきた。
良充はやっとのことで啓輔の机から身体を剥がし、唇を尖らせたまま決まったばかりの座席へと戻った。
――こんな特等席、誰が代わるか。こんな自然にいつでも良充を見てられる場所。……誰にも譲らへん。
現国の授業が始まって十分。良充の頭がさっそくかくん、と船をこぎ始めた。良充を起こす為に投げる消しゴムを小さくカッターで刻みながら、啓輔は心新たに誓った。
誰にも、譲らへん。座席だけやない。良充も、良充から一番近い、俺の居場所も。
良充に頼まれて断るの、ちょっと辛いし、良充も可愛そうやけど、良充にはとりあえず、あの特等席で我慢してもらお。
啓輔は小さな消しゴムをぴんっと良充に向かって投げつけた。
おしまい
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「うっわ〜、山中、ムカツク〜。啓輔がいいんやったらええやんかぁ」
「……だからいややって」
啓輔の机につっぷしてお願いする良充に冷たく言い放つ形で啓輔は答えた。
「ええ〜っ? なんでぇ?」
「だいたい、俺の席の方が先生の目が届きやすいやろ。灯台もと暗し、ていうやん」
「そーはいかんで。枦は居眠りの常習犯やからな。きっちり目届かせるで。それに、お前のお目付け役からもよう見えて、ええ席やないか」
勝ち誇ったように山中ががははと笑う。
「くっそ〜、山中〜っ! イカサマしたんちゃうやろな〜っ」
がははと笑いながら教室を出て行く山中の背中に向かって良充が叫んだ。クラスメイトたちからは「まあ、がんばれよ〜」だとか「そやそや〜。松山が見ててくれるんやから大丈夫やって〜」とか、無責任なかけ声が笑い声とともに投げかけられる。
「あ〜もう、俺絶対寝てまうから、ホンマ、啓輔、ちゃんと見ててくれよ」
諦めた良充は上目使いの大きな目で良充を睨み、唇を尖らせて啓輔に言った。
「おう、見てたる」
啓輔は膨れっ面の良充の頬を、指でつまんでびよーんと伸ばした。
「痛っ! 何すんねんっ!」
「眠気覚まし。ほら、もう先生来るで」
啓輔がそう言った途端、教室の戸ががらっと開いて、現国の池田が入ってきた。
良充はやっとのことで啓輔の机から身体を剥がし、唇を尖らせたまま決まったばかりの座席へと戻った。
――こんな特等席、誰が代わるか。こんな自然にいつでも良充を見てられる場所。……誰にも譲らへん。
現国の授業が始まって十分。良充の頭がさっそくかくん、と船をこぎ始めた。良充を起こす為に投げる消しゴムを小さくカッターで刻みながら、啓輔は心新たに誓った。
誰にも、譲らへん。座席だけやない。良充も、良充から一番近い、俺の居場所も。
良充に頼まれて断るの、ちょっと辛いし、良充も可愛そうやけど、良充にはとりあえず、あの特等席で我慢してもらお。
啓輔は小さな消しゴムをぴんっと良充に向かって投げつけた。
おしまい
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私は、こういうショートショートみたいなのはほとんど書いたことがないので、ベラさんの作品はとても新鮮。
1作1作が小さな宝石で、それが繋がって1連のネックレスに仕上げられるような。