「……歩」
心配そうにかけられる言葉も、今は神経を逆撫でる。どこか訳知り顔な兄の様子も歩を苛立たせた。兄がいつも歩を大事に思っているという事は分かっている。でも、大人で、普通の恋愛をしてきた兄に何が分かるだろう。もう、構わないで欲しい。
「こんな時間に俺んトコなんか。……ユーコさんは?」
それを遠回しに伝えようと二世帯で同居する兄嫁の名を出した。
「ここの所お前の帰りの遅い日が増えてきてたから優子も心配してるよ」
「……今日で最後だから。その心配なら、もう要らねーよ」
「……そっか」
安堵の空気が進から流れてくる。進が、慰めるように歩の頭をぽふぽふ、と優しく叩いた。この無防備な優しさに、何度この身体を焦がした事だろう。けれども今欲しいのは、もうこの手じゃない。
「お前はまだ十七なんだ。やるべき事もたくさんあるだろ? きっとすぐ、……忘れられるよ」
「……」
何かあればいつでも俺を頼れよ、と歩の髪をそっと撫でて、進は部屋を出て行った。
やるべき事? 兄はどうして慎治と同じ事を言うんだろう。兄の訳知り顔は。何か知ってる? まさか。――まさか。
一度浮かんだ疑念はあっという間に思いを駆け巡る。慎治から突き付けられた、急な別れ。歩には何も訊かないのに、どこか訳知りな兄の態度。似通った、二人の言葉。兄が慎治に歩と別れるよう働き掛けたのだとしたら、全て合点がゆく。
そんなはずはない、と首を振り、否定する。今まで歩は自分の恋愛について、兄に話した事などない。きっと、大人が思う事は、所詮同じだという事なんだろう。自分に言い聞かせる。
分からない。でも。
ただ一つ、分かる事は、今は時期ではない、という事だ。大人になろう。大人になったら、もう一度。もう一度だけ。
――慎治さんに会いに行こう。
たとえ彼に新しい恋人がいても。許してもらえなくても。
歩は震える肩に唇を噛み締め、拳を握った。
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「……今日で最後だから。その心配なら、もう要らねーよ」
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「お前はまだ十七なんだ。やるべき事もたくさんあるだろ? きっとすぐ、……忘れられるよ」
「……」
何かあればいつでも俺を頼れよ、と歩の髪をそっと撫でて、進は部屋を出て行った。
やるべき事? 兄はどうして慎治と同じ事を言うんだろう。兄の訳知り顔は。何か知ってる? まさか。――まさか。
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そんなはずはない、と首を振り、否定する。今まで歩は自分の恋愛について、兄に話した事などない。きっと、大人が思う事は、所詮同じだという事なんだろう。自分に言い聞かせる。
分からない。でも。
ただ一つ、分かる事は、今は時期ではない、という事だ。大人になろう。大人になったら、もう一度。もう一度だけ。
――慎治さんに会いに行こう。
たとえ彼に新しい恋人がいても。許してもらえなくても。
歩は震える肩に唇を噛み締め、拳を握った。
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そして歩、大暴走!?
その先の慎治は?
どうしましょう、ドキドキしてきました。