「……歩」
二日振りに声にしたその名前は、喫茶店で三杯目のコーヒーを注文して以来長時間話さなかった慎治の喉を通ると、少し掠れた。歩は慎治を見据えて立ち止まった。
「歩、ちょっと……」
こっちへ、と駅へ向かう学生達の流れから外れるよう顎で促す。「おい歩、大丈夫かよ?」と心配そうに声をかける友人には小さな頷きで応え、歩は慎治に黙って従った。数分歩いて、慎治は立ち止まった。
「ごめん歩……。俺この辺り地理分かんねぇ。どっか話せるとこ……」
慎治がバツ悪そうに頭を掻くと、歩は小さく笑った。
結局歩に連れられる形でやって来たのは古びた公営住宅の狭間にある、小さな公園だった。団地を作る際に規定に則って申し訳程度に作られた事が窺えるそれは、遊具と言えば滑り台とブランコのみで、遊ぶ子供の姿もなくひっそりと、雑草の薄い緑で団地の隙間を埋めていた。その公園の脇に置かれたベンチに、二人腰を下ろした。
歩を見る。慎治の視線に気付くと歩は目線を正面から慎治に向けた。笑っても怒っても悲しくもなさそうな、読めない無表情。先日の事を思えば、一緒に来てくれただけでも御の字か。
「歩……、……」
言葉が、出ない。喫茶店で頭の中に並んだ言葉達はどこへ行ってしまったのか、少し開けた唇から出て来るのは空白ばかりで、慎治は何度も乾いた唇を舌で湿らせた。
「慎治さん」
歩が静かに、名を呼んだ。
「……今から慎治さんの部屋、行っていい?」
慎治は黙って頷いた。
部屋に着くまで、二人は終始無言だった。ラッシュまであと少しの、混み合い始める直前の時間帯。時折肩が触れ合うと、息が詰まった。
歩は何を思っているのだろうか。友人とは呼べない組み合わせの、歩と俺。校門で歩を心配していた友人には、明日学校で俺の事を何と説明するんだろう。
電車に揺られ、中吊り広告に並ぶ大袈裟なタイトルの羅列を目で追いながら、慎治はそんな事を考えていた。
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「歩、ちょっと……」
こっちへ、と駅へ向かう学生達の流れから外れるよう顎で促す。「おい歩、大丈夫かよ?」と心配そうに声をかける友人には小さな頷きで応え、歩は慎治に黙って従った。数分歩いて、慎治は立ち止まった。
「ごめん歩……。俺この辺り地理分かんねぇ。どっか話せるとこ……」
慎治がバツ悪そうに頭を掻くと、歩は小さく笑った。
結局歩に連れられる形でやって来たのは古びた公営住宅の狭間にある、小さな公園だった。団地を作る際に規定に則って申し訳程度に作られた事が窺えるそれは、遊具と言えば滑り台とブランコのみで、遊ぶ子供の姿もなくひっそりと、雑草の薄い緑で団地の隙間を埋めていた。その公園の脇に置かれたベンチに、二人腰を下ろした。
歩を見る。慎治の視線に気付くと歩は目線を正面から慎治に向けた。笑っても怒っても悲しくもなさそうな、読めない無表情。先日の事を思えば、一緒に来てくれただけでも御の字か。
「歩……、……」
言葉が、出ない。喫茶店で頭の中に並んだ言葉達はどこへ行ってしまったのか、少し開けた唇から出て来るのは空白ばかりで、慎治は何度も乾いた唇を舌で湿らせた。
「慎治さん」
歩が静かに、名を呼んだ。
「……今から慎治さんの部屋、行っていい?」
慎治は黙って頷いた。
部屋に着くまで、二人は終始無言だった。ラッシュまであと少しの、混み合い始める直前の時間帯。時折肩が触れ合うと、息が詰まった。
歩は何を思っているのだろうか。友人とは呼べない組み合わせの、歩と俺。校門で歩を心配していた友人には、明日学校で俺の事を何と説明するんだろう。
電車に揺られ、中吊り広告に並ぶ大袈裟なタイトルの羅列を目で追いながら、慎治はそんな事を考えていた。
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実は、深夜12時をこえると、いそいそと通ってましたの(笑)
この無言の緊張感がたまらんな〜!盛り上がります!!!
PS,申し訳ありませんが、ブログを休止しました。リンク解除等のご判断はおまかせしますので、よろしくお願いします。
で、でも〜〜〜〜〜〜!読みにはきてたりしまふ〜(笑)これからも、よろしくね♪