「じゃあこれからも部長にお会いする事ができるんですか……?」
「呼ばれればいつでも部に顔出す事だってできるし……ツバキ、お前に会う事だって。全然可能だ」
「嬉しいです友冶さんっ!」
満面の笑みで村椿ががば、と抱き付いてきた。
「もう僕本当にどうしようかと……あとを追うにしても二年は……長すぎると思って……」
肩口に顔を埋めた村椿の唇が、三垣の首根をそっと吸い上げる。そのまま首筋を舌で舐めなぞられると、一度小さくなった快感の種火が擽られてぞくりと背筋が震えた。
「……っん、ツバキ、ちょっと待て」
「好きです友冶さん……」
「……っと待てってツバキっ前言撤回だ!」
村椿の動きがぴた、と止まる。
「どれが撤回なんですか……?」
また目元の泣きぼくろが暴れだしそうな表情で三垣を見た。それだけで三垣の心はグラグラ揺れる。
「いいい一人前、って言った事だっ! そんなガセ掴まされて踊らされてるようじゃまだまだだっ」
「はい……」
村椿がしゅん、と頭を下げた。
「お前が本当に一人前だと思えるようになったらっ! そしたら俺に挿れさせてやる」
「そんな……」
「早く一人前になればイイだけだろ? 志水になんか頼ってねぇで、俺に頼れ」
「はいっ僕頑張りますっ! 友冶さん、好きですっ」
今日も二転三転する村椿の表情に結局翻弄されてしまう。
――しょうがねぇか。俺はこの笑顔には勝てねぇよ、多分一生。
しがみつくように抱き付く村椿を、三垣は完敗だ、と肩を竦めて抱き締めた。
「うーっすそろそろ終わった?」
戸を開けて、志水が顔を覗かせた。
「志水おまっ……!」
三垣は慌てて側の下着とジーンズを掻き集めて穿き直した。その様子を志水が目敏く見やってニヤリと笑う。
「おや。恋愛成就したみてぇだね。良かったな〜ツバキちゃん」
「ええまぁ……でも……」
「志水っ! 一発殴らせろっ」
三垣が立ち上がろうとすると、足がもつれて布団に尻餅をついた。
「あら。もうバレちゃったんだ? まあまあぶちょー、そうでもしねぇと踏ん切り付かなかったっしょ? 部長もツバキちゃんも。感謝して欲しいくらいだね」
事の成り行きを見届けた志水は満足そうに笑って、戸を閉めてまた階下に下りて行った。
「あーもークソっ」
三垣は布団を叩いて頭を抱えた。
「友冶さん」
「あんだよ」
村椿が改まった表情で三垣の傍に正座した。
「フツツカ者ですがどうぞよろしくお願いします」
一礼して、顔を上げた村椿がはにかんだ笑みを向けた。
「!!」
三垣の苦労は一生終わりそうにない……かもしれない。
おしまい
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