――このネクタイは、一体なんなんだ。
俺は乱れた陳列を並べ直しながら、そのネクタイを持ち上げて眺めてみた。
まだ無名に近い若手のグラフィックデザイナーの手によるものだ。ウチの百貨店が見つけてきた新鋭デザイナー何人かに依頼して、季節限定のネクタイをオリジナルで出した。作った数もそう多くはない。いくつかある中で確かに彼のものは一際惹かれるものがあった。
今日初めて陳列して開店から三人。いや一組と二人。一組目は明らかにカップルだった。
「これお前に似合いそう」
「そう?」
言われた男がネクタイを手に取って身体に合わせ、一緒にいる男に見せた。
「似合う似合う。スゲェお前のエロさが引き立つ」
「やっぱソコか」
「うひゃひゃひゃ」
そんなやり取りを残して二人は別館へと去って行った。
次に来たのがカワイイ系。そのネクタイを見つけた途端、周囲を確かめるように見渡して、それからワナワナ震えるようにそれを手に取った。贈る相手を想っているのか、ネクタイを抱き締める勢いで。俺の視線とかち合うと、頬を染めてそれを棚に戻した。そしてどこかオドオドした様子で、売り場からコソコソ去って行った。
それから暫くしてやってきたのは、今度はなんともそそられる――というか、とにかくちょっと構ってみてやりたくなるような、要するにそんな感情を人に抱かせる男だった。彼もまた、そのネクタイを見つけた途端、うわー……、と小声で呟いてそれを手に取った。
「こちらのネクタイ気になられますか」
背後から声を掛けてやると彼はびく、と身体を強張らせて振り返った。
「今日から出してる商品なんですけど、期間限定になりますので。なくなり次第売り切れとなりますのでお早めにどうぞ」
彼ははあ、とかなんとも気のない声を返した。
「贈り物ですか?」
言葉を畳み掛けるといやその、と言葉を濁し、また来ます……、と逃げるように売り場を去って行った。
一本だけ乱れたこのネクタイをまた直して俺は思った。
――デザイナーも、反応を見せた客も、きっとみんなお仲間だな。
なんだか可笑しくなって一人ニヤついていると遠くに歩の姿が見えた。夜バイト前に、少し早めに家を出てこうやって時々俺に会いに来る。
「……このネクタイ」
側まで来た歩が、俺が戻したばかりのネクタイに視線をやって呟いた。
「あこれ? なかなかイイだろ。今朝から客もコレにばっか反応してるよ」
俺は戻したばかりのネクタイを取って歩に見せてやった。
「慎治さんに似合いそうだね」
「……そかぁ?」
「うん。なんか、やらしそう」
やっぱソコか。
なんなんだ、このネクタイは。
仕事中にもかかわらず俺は噴き出してしまった。
「六月入ったらまた新しいデザインのが入る予定なんだ」
「ふーん?」
「同じデザイナーので紫陽花のイイのがあるからお前に買ってやるよ。きっとお前に似合う」
「やらしそうで?」
「分かってんじゃん」
桜色のネクタイを陳列に戻しながら俺は、歩と迎える幸せな雨の季節に想いを馳せた。
おわり
ハキダメのurajiさんに捧げますー!
やっと何か贈れた!
urjaiさんトコのキャラタンが
『麗人は時に苦し』で慎チンからネクタイを買ってくれたそうなので
その様子を妄想してみますた。
urajiさんのキャラ勝手に、ほんと勝手に動かしてしまってごめんなさい
色々イメージと違いすぐるわ!な部分があれば即効直しますんでご指摘ヨロですアセアセ
ちなみに新鋭のグラフィックデザイナーはハナさんトコの
エロCGデザイナーという脳内設定(゚∀゚)アヒャ
↑って言ってたらハナさんがいっちー(エロCGデザイナータン)が
ネクタイのデザインを手がけるに当たっての話を書いて下さいますた!!!!
『恋人たちへと想いを込めて』
ちょwwwwwあゆしん見てネクタイデザイン考えてくれてた(;´Д`)ハァハァ
た ま ら な すハァハァハァハァ
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