目覚めたのは、ベッドの中だった。意識が遠のき坂崎に抱き抱えられてベッドに運ばれたのをぼんやりと覚えている。運ばれた先で、朦朧とした意識の中でもまた坂崎に行為をねだった。結局何度イったのか分からない。繰り返された行為で後孔が軋む。坂崎がまだ体内に居るかのような行為の名残。その余韻を確かめるように背後に意識を遣ると、粘膜が擦れてぞくりと全身が震えた。
「ん……」
また官能の熱を呼び起こしてしまいそうな自分に苦笑する。背には坂崎の体温。二人共何も着ていなかった。坂崎の腕の中、そっと身を捩って身体の向きを変える。間近で坂崎の寝顔を見詰め、陣内は幸福に目を細めた。
すっと通った鼻筋。意外に柔らかい唇。閉ざした瞼の下には、随分前から陣内に熱い視線を向けていた双眸がある。その視線に、二人がこうなるという予感めいたものを感じるようになったのはいつからだっただろう。あるいは初めて二人身体を重ねた、それよりも以前だったのかも知れない。
坂崎の唇を指先でそっとなぞる。唇の間に指先を挿し入れてその中の歯列を辿ると、唇の弾力から硬質な感触に変わる、それが酷く愛しいと感じた。
不意に歯列が小さく開き、その指先に甘く歯が立てられた。
「ぁ……」
坂崎の瞼が開く。陣内をじっと見詰め、笑みを浮かべた。
「……おはようございます」
陣内が動けなくなるくらいじっと見据えながら、歯で捕らえた指先に舌を這わせる。
「ん……、はよ……」
思わず顔が熱くなるのを感じて、陣内は目を伏せた。その額に、坂崎がそっと口付ける。
「もう……石田には渡せませんから。……心も、身体も」
不敵にも見えたその表情の下には、まだ不安が隠されている事をその言葉で知る。陣内は顔を上げ、坂崎に笑みを向けた。
「……もうとっくに……全部坂崎のものだから。坂崎こそ俺を……」
離さないでくれよ、と囁いて、恋人の唇にキスをした。
「陣内さん、見送りありがとうございます。……ってなんでお前までいるんだよ」
石田が坂崎を恨めしそうに睨み付け、そして笑う。
「同期だろ? 陣内さんより、見送るならむしろ俺だろーが」
坂崎がにや、と笑って石田の胸元を小突く。
空港の広い出発ロビー前。シンガポールへ発つ石田を二人で見送りに来ていた。大半の荷物は引っ越し便に乗せたとかで、小振りなスーツケースを一つ携えただけの石田は驚く程身軽だった。誰も見送りがいなくて、と、どこか寂しげに笑う石田の言葉に、陣内は一も二もなく見送りを申し出た。坂崎に話すと、出発が土曜日だった事もあり俺も行く、と言い出した。
「陣内さん、坂崎が嫌になったらいつでも。俺がいますんで」
「ん……ありがと」
冗談口調で向けられた石田の言葉に、陣内が笑って頷く。
「石田おまっ……」
「それ位言わせろよ。……じゃあ」
軽く頭を下げ、石田は二人に背を向けた。やがて大きな自動扉の向こうに、その姿を消した。
「――行こうか」
「……はい」
二人は肩を並べて歩き出した。
おしまい
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なんとか終わりましたー!(;´Д`)
いかがでしたでしょうか、感想等お聞かせいただけたらウレシスでございます。
ここまでお付き合いくださったみなさま、ありがとうございますたー!*************************************************
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